2005-08-01から1ヶ月間の記事一覧

競争社会に乗れないということ

結局、それはいかんともしがたいことであり、そうである以上、いわゆる負け組みなわけである。多くの人は有用な知識・技術の習得に精を出しているが、僕は役に立つというだけで何かを学ぶ気にはなれない。 世間で言う「勝ち」とはいい暮しをすることである。…

『ロシア短編集』(バベルの図書館16)

ドストエフスキー「鰐」、アンドレーエフ「ラザロ」、トルストイ「イヴァン・イリイチの死」が収められた短編集。 「鰐」は風刺に満ちたコミカルな話であり、おもしろかった。ドストエフスキーの奥深さを知った。 「ラザロ」は死から甦った男、ラザロの話。…

『夜の天使』(ジャン=ピエール・リモザン 1986年)

原題はLe gardien de la nuit(夜警)。主人公のイブは警官で車泥棒という矛盾した男。イブがダムに飛び込んで追っ手を振り切った後、ぬっと現れるシーンと看護婦の恋人とキスしているところをバスの中から目撃されるシーンがすごくよかった。無謀な挑戦と純…

『フェリックスとローラ』(パトリス・ルコント 2000年)

退屈な映画の予感がした。最初の映像からラストを予想できたからだ。でも、ラストはいい意味で裏切られた。オシャレな恋愛映画ではなく、現代人の切実な問題をテーマにした映画だと思う。

『インド夜想曲』(アラン・コルノー 1988年)

昔、まだ映画をほとんど見なかった頃、この映画を見て特別な印象を受けたことを覚えていたが、友達との会話でこの小説の話が出てきて突発的に見たくなった。 アングラードは三十くらいだろうか。若いという印象を受けた。映画はといえば、小説をうまく映画化…

『聖ジュネ―殉教と反抗』ジャン=ポール・サルトル

かなりボリュームがあるが飽きることなく読めた。バタイユも言っているようにこの本にはサルトルの情熱が感じられる。ジュネが実存主義の完全なサンプルだからだろう。僕は無価値性という概念や負けるが勝ち的な論理に興奮を覚えずにはいられなかった。また…

『泥棒日記』ジャン・ジュネ

囚人服の模様について書かれている最初のページから引き込まれた。ジュネの文体は壮麗で、物々しいとも言えるが、非常に力強く圧倒的だ。ジュネが目指している崇高さ――屈折した崇高さとでも言おうか――には熱狂させるものがあった。

『ジェネレーションX』ダグラス・クープランド

すごく共感できた数少ない本の一冊。自分はX世代なんだってこれを読んで自分のことを肯定できた気がする。 ただ、この本の三人のような暮らしが解決に繋がるかどうかには疑問を抱くようになった。

『トルストイ短編集』

19世紀の作家らしく素朴な語り口でわかりやすい短編小説集。最近よんだムージルの小説のように突飛なところはなく、安心して読めた。読み継がれているだけあって、よく練られた完成度の高い話という印象を受けた。全編に通ずるテーマは大雑把に言えば人間の…

『出発』(イエジー・スコリモフスキ監督 1967年)

ジャン=ピエール・レオー主演のヌーヴェル・バーグの映画。だいぶ前にパルコPart3の映画館で見た。レオーにはカー・レースに出るという野心があるが、根無し草で、動作に落ち着きがないいつもレオーだ。 僕はこの映画で描かれている青春の瑞々しさ、そして…

『構造と力』浅田彰

この本を読んだのはもう十年くらい前になってしまう。引き込まれたのは前半だけだったが、僕にとっては衝撃的な一冊だった。思えばこの本がバタイユを読むきっかけになったのだった。 浅田氏の文章は横文字が多いが、とにかく明晰な文章だ。そして、緊張感の…

『陰鬱な美青年』ジュリアン・グラック

耽美とか退廃といった言葉が相応しい話。できれば原文で一文一文を味わい尽くしたい小説だった。出版されたのが三十年以上前で、それ以来版を重ねてないので、図書館で借りたときぼろぼろでびっくりした。翻訳はそれほど悪いとは思わないが、思いっきり翻訳…

『愛の完成 静かなヴェロニカの誘惑』ムージル

観念的な小説だった。文章はよく練られていて、見事としか言いようがない。あまり頭に入らなかったが、こんな小説もあるんだという驚きがあった。