「ミスター・ノーバディ」

ファム・ファタール」に似ているように思った。浴室のシーンとか。この映画を一言で示すと「パラレルワールド x 純愛 x SF」と言えるだろうか。
3人の女の子の誰と結婚するか、離婚した両親のどちらに付くかなどの組み合わせで幾通りもの人生が描かれる。偶然ですべてが変わる。文字通りバタフライ効果で両親が結婚したり。それを視覚化したのはおもしろかった。個人的には、ふと口をついて出た棘のある言葉で将来の妻を失う場面が印象深かった。
サラ・ポーリーがメンヘラの役で熱演してたが、昔ユマ・サーマンに似ていると言われていた彼女がユマとはだいぶ違った女優に成長したことが感慨深かった。あと、ジャレッド・レトの思春期の役の子が超美形だった。
【以下ネタばれあり】
ラストはあまり好きではない。時間が逆回転することは、人にとって何を意味するのかが示されていなかったから。

ラストデイ

2011年の最後の日、カウントダウンの場所に選んだのは川崎ラ・チッタデッラ
7時半頃ラ・チッタデッラ着。目に付いたイタ飯屋に入る。なかなか良い感じの店だった。食事後、ファミレスに移り、23時40分頃外に出る。その時点で大勢の人で広場が埋め尽くされていた。ドリンクを買いに入ったコンビニにも長蛇の列が。
カウントダウン直前には押しくらまんじゅう状態で身動きがとれず、ドリンクをこぼさないよう気をつけるのみ。年明けの瞬間は、花火が上がり、なかなか盛大だったが、周りに押し流され、仲間とはぐれてしまい、乾杯できなかった。ポジショニングは大いに反省すべき点だった。その後、人が捌けていくにつれ、スペースができ、良い感じに。
音楽はかなり良かった。野外ではあるが、暖房器具も十分にあり、問題なかった。今年何度か行ったオールミックスのクラブよりはるかにマシ。ホムレスの人や踊るおじいさんがいたりして、まさにカーニバルだった。
その後「マネーボール」を鑑賞。悪くはなかった。ブラピファンなら見る価値があるだろう。
明け方に川崎大師に初詣に行っておみくじを引いてから、帰宅。

「さすらい」

長い映画だった。冒頭のフォルクスワーゲンが爆走して、湖に突っ込むシーンが鮮やか。
最初は二人の男の背景がわからず、話に入り込めなかった。
テーマは最後の方までわからなかったが、最後の会話でようやくかなりクリアになった。ラストの会話はかなり共感できるものがあった。
物語がなくても、おもしろくなり得ることを確認できる映画だった。
【以下ネタばれあり】
しかし、脱糞のシーンはどうなんだろう? あえて映す必要があったのだろうか? 映画で見たのは「ピンクフラミンゴ」以来だ。

「エッセンシャル・キリング」@アップリンク

たまたまツイッターで公開中であることを知り、見に行った。
ランボータルコフスキーというコピーのとおり、アクションシーンが見ものではある。タルコフスキー的なのは終盤だろうか。
僕は「変態村」にも似ているように思った。たぶんストーリーがシンプルなことと寒地の場面が多いことからそう思ったのだろう。極寒の地で逃げまわるギャロは、死なないことが不思議なくらいだった。ギャロのセリフは一切ないが、幻想のシーンやコーランの夢のシーンもあり、多少ともギャロの内面が描かれている。
【以下ネタばれあり】
主人公が殺し屋だったり、人を殺しまくるという話はたいていラストで主人公が死ぬが、この映画でも同じだった。しかし、疑問の残る死だった。

「都会のアリス」

ロードムービーヌーヴェルヴァーグ風の映画。
モノレールが車道の上を走っているというアムステルダムの街の風景がおもしろかった。
アリスには9歳とは思えない大人っぽさがある。
音楽や光の使い方が良かった。エンターテインメント性はないが、良作だと思う。

夏の終わり

夏が終わろうとしている。ポーティスヘッドの曲が似合う季節になった。
僕は2011年の夏を一生忘れないだろう。真夏にマンションの屋上から飛び降りて若い命を散らした友人Fのせいだ。
しばらく、Fが死んだという事実が常につきまとっていた。朝起きても、まずFが死んだことを思った。外を歩いても高い建物が目に付くようになった。あれくらいの高さからFは飛び降り、灼熱のアスファルトに時速80kmで激突したのだな、と思ったりした。あの高さから飛び降りるとは驚異である。何が彼に一線を超えさせたのか。創作や生活に行き詰っていたというのはあるかもしれない。しかし、自殺は小説の中だけにしろよ!
逝ってしまった彼に何を言っても虚しいが、そう言わずにはいれらない。あと、せめてお疲れと言いたい。

『ドーン』(平野 啓一郎)

2036年アメリカが舞台。有人火星宇宙飛行船「ドーン」の話と大統領選挙の話が軸になっている。
ウィリアム・ギブスンの小説のように複数の登場人物の視点の話から構成されている。東アフリカにおける戦争の泥沼化という大きな話と佐野明日人というドーンのクルーの話がリンクしている。
分人主義(ディヴィジュアリズム)、散影、ARによるイメージなどさまざまな新しい発想・ギミックに溢れている。おもしろい。一気に読めた。文章もうまい。比喩的表現に満ちた純文的な文体だ。
分人については、そういう考え方もできると思うが、それを説明のためではなく、積極的に活用できるのかどうかわからなった。